理想のリーダー像に共通するのは、雰囲気作りのうまさ

2022.12.02

読売ジャイアンツの原辰徳監督は、監督就任時から「ジャイアンツ愛」という言葉を掲げました。

これはチームの価値の創造であり、組織のアイデンティティでもあります。

昔の王・長島時代なら「何が何でもジャイアンツ」といったところがありました。

それが時の移り変わりとともに多様な個性が現れ、トップブランドがトップブランドではない時代になりました。

そこで、「ジャイアンツ愛」というチームの価値を掲げたのです。「愛」ですから、ナンバー1である必要はありません。その点で、どのチームや組織にも応用できる、ブランド力の創造です。

今回は読売ジャイアンツを例に出しながら、チームをひとつにまとめる空気作りについてお話をしていきたいと思います。

チームをひとつにまとめる雰囲気作りとは

原監督は、選手達に練習の時にもきちんと帽子をかぶらせるようにしました。

「ジャイアンツの選手なんだから、練習の時も身なりをきちんとしよう」と。

原監督が、ことあるごとに選手達に「ジャイアンツの選手なんだから、自覚を持とう」と指導するのは大きなポイントです。

選手達にこれが浸透すると、チームのブランド力が強固になり、みんなが加わりたい、働きたいと思える組織になっていくのです。

また、原監督は選手がホームランを打った時に、こぶしとこぶしで「グータッチ」をすることでも知られています。

ハイタッチとは何が違うのでしょうか?

流れ作業のようにやるハイタッチとは違い、原監督のグータッチは選手の目をよく見て、「よくやったぞ」としっかりと認めるのです。

やはり、選手達は監督から、評価されたいものです。

監督の目を見て、そのパワーを感じながら、きちんとほめられることで、「このすごいチームにふさわしい、素晴らしい自分」という自覚が芽生えます。

監督が掲げたチームの価値「ブランド力」と選手を評価する行為がチームに良い雰囲気を生み出しています。

このようにチームのブランド力と、選手の自己肯定感を上積みしていくために監督がほめることは、とても大切なのです。

監督にもさまざまなタイプがいて、「チームを燃やす男」もいます。東北楽天ゴールドデンイーグルスの星野仙一監督は、その典型でしょう。

彼が一般的に 「燃える男」と言われていますが、私は熱く抗議したり、怒ったりすることで、選手達を奮起させる「燃やす男」だと思います。

監督の仕事とは、選手達の戦いやすい空気を作ること。

彼は選手達の気持ちを代弁するように怒ることで、チームの気持ちをひとつにまとめているのです。

それに応えようとチームと各個人が奮起し、チーム力や個人のパフォーマンスを高めているのです。

サッカー日本女子代表の佐々木則夫監督は、今までの日本にはなかった強いチームを作った監督だと思います。

ワールドカップの決勝のPK戦で澤穂希選手が「PKは苦手だから、最後にして」と言ったら、佐々木監督は「わかった」とあっさり了承しました。

ワールドカップの決勝という重要な場面です。普通の監督であれば「キャプテンのお前が何言っているんだ。ビシッと決めて、若い選手達に手本を見せろ」と言い出してもおかしくないシーンです。

もちろん、澤選手も言える雰囲気があって、多分OKをもらえるだろうから言ったと思うのです。

この場面だけでも、佐々木監督が普段から選手達の目線を大事にし、伸び伸びと育てていることがうかがえます。

そして、おそらくPKでガチガチに緊張するタイプと、「私、いけまーす!」と難なく蹴れるタイプも見極めているのだと思います。

監督の仕事は、チームを勢いに乗せることです。

日本はどうしてもつらくて厳しいのに耐えることが好きなのですが、そこがゴールではありません。なでしこのように笑っても強くなれる空気を作れればいいのです。

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