親が思うことと子どもが感じることにはギャップがある

2022.09.22

実は親がよかれと思ってやっていることと、子どもが感じていることには、大きなギャップがある場合があります。子どものためにやっていることでも、子どもからしてみれば、迷惑だと感じたりプレッシャーに感じることもあるようです。では、親が思っていることと子どもが感じることのギャップを埋めるにはどうすればいいと思いますか?

「愛情を間違えてしまった」ご夫婦の話

あるご夫婦の成績が優秀だった息子さんが一流大学にストレートで入った途端、カルト的な新興宗教に入り、教団で集団生活を送るようになって、家に帰ってこなくなってしまいました。

カルト宗教が恐ろしいのは、集団で引きこもらせて、世に出てこなくなるというところです。また、一度洗脳されてしまった人を元に戻すことは、非常に困難なのです。

何とか両親が息子を呼び出して、ホテルに缶詰めにして、元信者の方の協力を得て、「脱洗脳」を行うことになりました。その脱洗脳をする前に、お父さんとお母さんがカウンセリングを受けに来られたのです。

お父さんはすごく優しいけれど、物ごとをあまり決められないタイプ。お母さんはわりといろんなことを仕切るタイプです。

お母さんは最初にこうおっしゃいました。

「子どものことを愛しているし、大好きだったけど、ひとつだけ間違えたことがあるんです。うちの子はとても頭がよくて、学校の成績もいつもすごくよかったんです。家でもよく言うことを聞いて、自慢の息子でした。私の唯一の間違いは、息子が可愛くてしょうがないんだけど、すごく頭のいい子だったから、もっといい子にしようと思って、一度も褒めなかったんです」

たとえば、子どもが90点を取ってきたら、すごいことなのに「90点取って賢かったね」と言うのではなく、「何で10点間違えたの?」と言ったそうです。

息子さんが「一生懸命勉強して、この結果だよ」と言っても、「もっと頑張らないとだめよ」と言い続けたのだそうです。

お母さんは、とても頭のいい、しっかりした方なのですが、ストイックすぎたのです。

私は「お母さんが間違いに気づかれたのであれば、お子さんにきちんと伝えられたらいいんじゃないですか」と話しました。

また、以前、両親が会いに行った時に、息子さんはこう言ったそうです。

「絶対に家には帰らない」

「ここの人達は、唯一、僕を受け入れてくれるんだ。僕は親にも受け入れてもらえなかったから、世の中の誰にも受け入れてもらえないと思っていた」

親がよかれと思ってやっていたことを子どもは「親にも受け入れられてない僕は、きっと世の中の誰も受け入れてはくれない。でも、ここの人達は、唯一、僕のことを受け入れてくれたから、ここにしか居場所がない」と感じていたというわけです。

しかし、親はまだそのギャップに気づいていないので、「家に帰ってきなさい」と言います。

すると、息子さんは「これ以上、僕の自由を奪うのはやめてくれ。家にいる間は何も自由じゃなかったし、自分として生きられなかった。家に帰って、また牢獄のような生活を送るぐらいなら、ここは天国だ」と言ったのです。

親にはまったくそんなつもりはないのですが、子どもにとって家は牢獄。子どもに何が、大きくて裕福なお家が牢獄だと言わせたのかというと、たったひとつ、親の間違った愛情だったのです。

大切なのは親と子の気持ちのギャップに気づくこと

悲しい話ですが、息子さんは二度と帰ってきませんでした。お父さんもお母さんもひとり息子が生きがいでしたし、愛情をすごく持っていきました。それでも、愛情を間違うと、こうなるのです。

親はよかれと思って子どもに接しています。一方で、自分の間違いにはなかなか気づけないものです。

なかなか難しいことではありますが、それでも、子育てや教育に熱心で、子どものためにストイックに頑張っている方が「最近、ちょっとうちの子がおかしいな」と思った時に、カウンセリングやメンタルトレーニングについて学ぶと、子どもが本当に追い詰められる前に、自分がしている間違いに気づけるはずです。

子どもがちょっとおかしいと感じたら、自分の思っていることと子どもが感じていることのギャップがないか確かめてみましょう。

子どもの気持ちがわからなければ、子どもに直接聞いてみましょう。親と子の気持ちのギャップに気づくことがとても大切なのです。

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