壊死してしまう原因は「人生のシナリオ」にある

2023.02.19

前回の記事では、「麻痺」と「壊死」の違いについてお話をしてきました。

さて、壊死してしまった人たちは、どうしてそうなってしまったのでしょうか。

極端な言い方ですが、彼らは今まで人間として見られてこなかったのです。

技術者であれば、ひと山いくらで買われて、技術の人身売買のような扱いを受けてきたのではないでしょうか。

彼らはつらい現状に耐え得るべく、自分の神経を何も感じないように 麻痺させているうちに、やがて壊死してしまったのです。

自分の人生のシナリオを理解しよう!

このように虐げられてきた人の有名な話があります。

幼いころから両親にずっと虐待されてきて、人間扱いされてこなかった子どもがいました。

やがて、親が刑務所に入ってしまい、孤児院に預けられて、心優しい里親に引き取られた のです。

今までのように殴られたり、もののように扱われることもなくなり、人間として接してもらえるようになりました。

しかし、その子どもは、だんだんと落ち着かない気持ちになります。

あるとき、その子は、お金に困っていないのに、家のお金を盗んだのです。

里親は「どうしてそういうことをするの」と聞いたのですが、その子は何も答えません。

里親は叱らずに「もし、お小遣いが必要なら、言えばいくらでもあげるから、盗む必要はないよ。君は、本当はとてもいい子なんだ。もっと自分がいい子だと思ったほうがいいよ」と言い聞かせたのです。

そうすると、その子は、その日の夜に家に火をかけたのです。

これは心理学の世界では、よくあることなのです。

これが人生脚本、つまりこの子どもの人生のシナリオなのです。

この子の人生のシナリオには、「自分はろくでもない人間だ。自分は将来、罪を犯す人間で、 りからは絶対に見捨てられる」と書いてあるのです。

以前、両親からひどい虐待を受けているうちに、そういった人生のシナリオを刷りこまれてしまったのです。

そして、ろくでなしであるはずの自分がかわいがられると、どうにも落ち着かなくなるのです。

「これは違う。こんなことはあり得ない。きっと何か裏がある。周りは自分を利用しようと 「している」

その子はなぜ家に火をかけたのか聞かれたときに、優しい里親のことを「嘘つきだ」と言 いました。

「税金対策で自分を引き取ったに違いない。僕のことを馬鹿にしているし、さげすんでいる」とも言うのです。

でも、実際は全く違います。

里親は本当の自分の子どものように育てたかったのです。

その子は、自分がろくでなしだと証明するためにお金を盗ったわけです。

それで里親から叱られたとしたら、「ほら、やっぱりろくでなしだった」と、気持ちが落 ち着くのです。

でも、叱られずに「君は本当はいい子だ」と言われると、深層心理では「これではいけない」と思います。

そして、「もっと悪いことをしないと、自分がろくでなしだとは実証できない」と思うようになるのです。

だから、人生のシナリオは怖いのです。実はこの手の人生のシナリオを持った人は、たくさんいるのです。

彼らは、ものごとが上手くいきかけると、自分で壊そうとします。

人生のシナリオのことを知らなければ、本人はいつまで経っても幸せになれないし、周りも大変な目に遭うわけです。

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