チームがストイックになりすぎることの悪影響

2023.05.16

アスリートやビジネスマンは、ある時期に一気に伸びて、結果をしっかり出すときがあります。

そんなときは上昇気流に乗って、さらに高みを目指して、より頑張っていこうとするものです。

でも、そんな思いとは裏腹に急に無気力になってしまうことがあります。

一度結果を出してから、さらにその結果を上回っていくことはかなり大変で難しいことです。

アスリートの場合は、今よりもさらに成長しようと、練習しすぎてオーバーワークになってしまいがちです。要はあまりにストイックになりすぎるのです。

もちろん、私達が強くなるためには、ある程度ストイックになることも必要です。

ただし、ストイックになりすぎると、スポーツでもビジネスでも、よくない方向に行きがちです。

ある若手アスリートは、子どもの頃から結果を出してきて、世界大会で優勝もしていました。

ただ、なぜ自分が強いのかをあまり分析することはありませんでした。

そして、さらに強くなろうと弱い部位の筋肉を強化していったのですが、逆に成績が落ちてしまいました。

より高みを目指して自分の弱いところを強化するものの、結局強くなれない。

これは、ア スリートがよく陥いる状況です。弱い部分をなくそうと鍛えたはずが、体のトータルバラン スが崩れて、結果が出せなくなるのです。

よかれと思って頑張ったのに結果が出ないので、 メンタル的にも相当なダメージを受けてしまいます。

結果を出したアスリートの体は、ある 意味完成形なのです。

精密な時計のように絶妙なバランスで成り立っています。

そのため、 悪いところは徐々に変えていき、よいところを伸ばすようにしてください。

完成された何か を変えることは、よくなるかもしれないし、悪くなるかもしれません。

それをわかった上で やってみる、だめだったら変えてみる、というスタンスでいたほうがいいのです。

このように、ストイックさがいきすぎると、裏目に出ることは少なくありません。

今まではなんとなく受け入れられてきた、チームの中で力の弱い人や評価が低い人を、許容できな

くなるのです。

でも、少々できない人にも当然いい面があります。

「ちょっとどんくさいけれど、仕事が丁寧だ」「仕事は遅いけれど、愛嬌があって、お客さんのウケがいい」という風に評価の高くない人を許容して、機能させているチームは強いのです。

仕事が少々できなくても、その人がいることで、場が和んだり、チームにいい空気感 をもたらしていることがあるのです

しかし、会社の業績が大きく伸びたときや、組織が大きくなったときに、改めて社員の評 価制度を整えたり、社内の自動化を進めるなかで、少々できない人達が切り捨てられてしまいます。

そうすると、チームのいい空気感や多様性が失われるのです。

その結果、お金をか けて、会社の弱いところを強化したつもりが、なぜか売上が落ちてしまいます。

チームがストイックになりすぎて、単一の価値観に誰も疑問を持たなくなったときは本当に怖いのです。

スポーツのチームでも全く同じことが起こり得ます。あるチームが新しい監督を迎えました。

今まではできない選手も含め、チームみんなで和気あいあいとやっているから、チーム力があって、そこそこ強いチームでした。

ところが新監督は、より高みを目指すために「できない選手は置いていく」と宣言して、ついていけない選手はどんどん切ってしまうのです。

上の選手が下の選手を手助けしようとしても、監督からは「人のことをやっている暇があるのか」と言われてしまいます。

その結果、個人のパフォーマンスは多少上がっても、チー ム力は著しく低下してしまいました。

このようにストイックになりすぎると、チームワーク が機能しなくなります。

チームワークで何かを成し遂げなければいけないときに、チームが ひとつの目標に向かって動けなくなるのは大問題です。

ストイックになりすぎたチームでは、能力のない人は、ますます委縮してパフォーマンス が落ちるし、上の人は下の人のパフォーマンスが落ちるから、自分の負荷が増えたり、常にピリピリして余裕がなくなります。

こうした状況に陥ったチームや会社組織は、意外にたくさんあります。

単純にいい悪いの問題ではなく、ストイックになりすぎるチームの価値観や美学に潜む「落とし穴」を見ていかないといけません。

ストイックになりすぎると、チーム力は著しく落ちることを知っていてほしいのです。

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