子どもが「どうせやっても無駄」と無気力になるのはなぜ?|頑張りすぎと「学習性無力感」の関係

2023.05.18

「前はあんなに頑張っていたのに、最近やる気がない」

「何を言っても『どうせ無理』『やっても意味ない』と言う」

「練習や勉強を頑張っているのに、自信をなくしているように見える」

そんな子どもの様子を見て、「もっと頑張らせたほうがいいのかな」と心配になる保護者の方もいるかもしれません。

しかし、無気力に見える状態は、単純な「怠け」や「根性不足」とは限りません。

むしろ、真面目で頑張ってきた子ほど、努力しても達成感を感じられない状態が続くことで、「頑張っても意味がない」と感じるようになることがあります。

「頑張っているのに無気力になる」のはなぜ?

たとえば、スポーツで良い結果を出しても、

「まだまだ」
「もっとできるはず」
「次はもっと上をめざそう」

と言われ続けたら、どうでしょう。

向上心を持つこと自体は悪いことではありません。

しかし、どれだけ頑張っても「できた」と認めてもらえず、次の課題ばかりを求められる状態が続くと、達成感を味わう機会が少なくなってしまいます。

勉強でも同じです。

80点を取っても「あと20点」。
志望校に合格しても「ここからが本番」。
目標を達成しても、すぐに次の目標。

これでは、本人の中に「頑張った→できた→うれしい」という経験が積み重なりにくくなります。

そして、

「どうせ何をしても認めてもらえない」
「頑張っても終わりがない」
「自分にはできない」

という感覚につながることがあります。

無気力は「学習」されることがある?―学習性無力感とは

心理学には「学習性無力感(Learned Helplessness)」という考え方があります。

これは、自分では変えることのできないストレスや失敗などを繰り返し経験することで、

「何をしても結果は変わらない」

と学習し、自分から行動しようとする意欲が低下してしまう状態を説明する概念です。

心理学者マーティン・セリグマンらの研究によって知られるようになりました。

大切なのは、無気力になった人が「努力できない人」なのではなく、経験の積み重ねによって「努力しても変わらない」と感じるようになることがある、という点です。

子どもが、

「どうせ無理」
「やっても意味ない」
「もういい」

と言うとき、その言葉だけを見て「やる気を出しなさい」と励ますのではなく、

「頑張っても報われない、と感じる経験が続いていなかったかな?」

と考えてみることも大切です。

頑張りすぎている子どもに家庭でできる3つのこと

1.結果ではなく「ここまで」を認める

「勝ったからすごい」
「100点だからすごい」

だけではなく、

「今日は最後まで練習したね」
「昨日より10分長く集中できたね」
「苦手なのに挑戦したね」

など、結果に至るまでの行動や工夫にも目を向けてみましょう。

成功したかどうかだけではなく、「自分の行動には意味があった」と感じられる経験を増やしていくことが大切です。

2.目標を達成したら、すぐに次へ行かない

目標を達成すると、つい大人は、

「じゃあ次はこれだね」

と言いたくなります。

でも、その前に一度立ち止まって、

「ここまでよく頑張ったね」
「何が一番大変だった?」
「自分ではどこが成長したと思う?」

と振り返る時間をつくってみてください。

達成したことを本人が実感する時間は、次の挑戦に向かうための大切なエネルギーになります。

3.「もっと頑張れ」より、小さく自分で決められることを増やす

無気力になっているときに、大きな目標を提示されると、それだけで負担になることがあります。

そんなときは、

「今日は何からやってみる?」
「10分だけやるなら、どれにする?」
「今日は休んで、明日からにする?」

など、小さなことでも本人が選択できる場面をつくってみましょう。

「自分で決めた」
「やってみた」
「少しできた」

という経験の積み重ねが、「自分の行動によって状況を変えられる」という感覚につながっていきます。

「やる気がない」と決めつける前に

無気力に見える子どもに必要なのは、必ずしも「もっと頑張らせること」ではありません。

頑張り続けてきたからこそ、エネルギーが切れていることもあります。

「どうしてやらないの?」

ではなく、

「ずっと頑張ってきたんだね」
「どこが一番しんどかった?」
「今は何ならできそう?」

そんな声かけから始めてみるのも一つです。

大切なのは、

努力する → 小さな変化が起きる → できたことを認める

という経験を少しずつ取り戻していくこと。

子どもの「どうせやっても無駄」という言葉の奥には、「本当は頑張りたいけれど、もう頑張り方が分からない」という気持ちが隠れていることもあります。

子どもの無気力を「性格」や「怠け」と決めつけず、その背景にある経験や気持ちに目を向けること。

それが、もう一度「やってみよう」と思える力を取り戻す第一歩になります。

※本コラムは家庭での関わり方の一例であり、医療的な指導には該当しません。不調が長引き生活に支障が出ている場合は、専門機関へご相談ください。

一人で抱え込まなくて大丈夫です。
アイディアグループでは、お子さんの年齢や状況に合わせて、高等学院(通信制高校サポート校)や中等部フリースクールなど、一人ひとりに合った関わり方を個別相談会で一緒に考えています

ページトップ