2026.10.23
「キャー!」と叫びながら歩いていたのに、出口に着くと「怖かったね!」と笑い合う。お化け屋敷では、そんな場面を見かけます。
怖い体験は、本来なら避けたいもの。それなのに、終わった後に楽しさや達成感を覚える人がいるのは、なぜでしょうか。そこには、恐怖に反応する脳の働きと、「安全だと分かっている」という状況が関係していると考えられています。
「作り物」と分かっていても、体は反応する
暗い通路で突然音が鳴ったり、人影が現れたりすると、心臓がドキドキし、体がこわばります。
こうした反応には、危険を知らせる情報の処理に関わる「扁桃体」を含む脳のネットワークや、体を活動に備えさせる自律神経の働きが関係しています。一方、状況を判断したり、感情を調整したりする過程には、前頭前野なども関わっています。
つまり、お化け屋敷では「体は驚いているけれど、作り物だと理解している」という状態が起こり得るのです。恐怖は、脳の一つの場所だけで生まれるのではなく、周囲の状況や記憶なども含めて形づくられます。
誰にとっても同じ怖さが心地よい、という意味ではありません。「少しドキドキする」が楽しい人もいれば、同じ刺激をつらく感じる人もいます。
達成感につながるのは、「怖かった」の後にあるもので、
出口に着いたときの「終わった、もう大丈夫」という安心。そして、「自分で選んで、最後まで歩けた」という受け止め方。こうした体験が重なることで、怖さが達成感へと変わる場合があると考えられます。
ここで大切なのは、単に怖い思いをしたことではありません。自分の意思で参加し、安全を感じられる状況で、その体験をどう意味づけたかという点です。
子どもには、その子なりの感じ方があるので、
こうした体験を、子どもの「度胸をつけるため」にとやらせるのは違います。
年齢や発達段階、性格、過去の経験によっては、作り物と分かっていても強い負担になる場合があります。
「嫌だ」「入りたくない」という気持ちを尊重し、無理に参加させないことが大切です。怖がることは=心の弱さでは決してありません。
お化け屋敷体験の研究は人がどのような状況で恐怖を楽しさや達成感として受け止めるのかを考える手がかりです。同じ出来事でも感じ方は違う。その違いに目を向けることが、子どもの心を理解することにもつながります。
参考資料:『別冊日経サイエンス288』