2022.08.31
同じことを経験したとしてもそれをマイナスととらえて反発するか、それを次に生かそうと自分を変えることに勤めるかは大きな反応の違いです。当然、どちらに傾くかで、その後の自分の仕事、また人生にも影響を与えるものです。実は、マイナスに働く行動をとってしまうのには2つの心の状態が関係しているのです。
心の状態には「麻痺」と「壊死」という2つの状態があります。
どちらも失敗を生みますが、その結果としての心の反応は大きく異なります。心が麻痺してしまっている場合は、原因は環境に起因することがほとんどです。最初はつらいと感じている事柄でも、その環境に毎日さらされていると徐々に痛みを感じなくなるのです。
やがては、何の心の痛みも感じないままに淡々と仕事をするようになります。
もしそこで、何か失敗をしていたとしても、自分自身でそのことに気づき改善していくのは難しい状態といえるのです。しかし、麻痺しているだけなら、周りの環境が変われば、あるいは間違いを指摘されれば、自分の改善点に気づくことができます。心が反応する力をまだ持っているのです。
つまりは、どうしたらもっと良くなるか、自分自身の成長には何が必要なのかを考える力があるということです。その向上心が残っていますので、麻痺による負のスパイラルから抜け出すことは十分可能です。
一方、心が「壊死」してしまっている状態になると、何かを指摘されても物事の本質が理解できません。何かの失敗を指摘された場合、自分自身が改善していこうと思う代わりに、そんなに怒るなら自分ではない別の人を起用すればよいという意識になってしまうのです。この状態では、自分自身の成長のためにもっと努力しようという心の体力があるとは言えません。
自分自身を変革しようという意識なくして、負のスパイラルを抜け出すことはできないのです。
心が壊死してしまう原因は何でしょうか。
それは、「人生のシナリオ」です。人生のシナリオとは、自分自身の中で無意識でつくられる人生の説明書のようなもので、壊死した心は人生のシナリオの結末が常に不幸に行き着きます。
この人生のシナリオは主に幼少期の育ってきた環境によって形成されると思われます。例えば、親から虐待を受けてきたり、自尊心を奪われるような経験をして来たりすると、まず心が麻痺してきます。
自分を守るためにその状況の中で何も感じなくなるようにするのです。その状況がさらに続くと、脳はその状況を当たり前の状況とみなします。つまり、それが自分の人生にとっては普通のことと認識するのです。実はこの状態はとても恐ろしいもので、自分にとって不幸な結末になるように人を動かしてしまうのです。特に人から認められたり、物事がうまくいき始めたりすると、それは人生のシナリオの傾向とは異なります。無意識で脳は、今までと違う状況から脱却しようと働きだします。
そうすると、そのうまくいっている状況に疑心暗鬼になり、その状況を自分から壊しに行ってしまうのです。
改善のために何かを変えようという意欲がなくなってしまうどころか、今までの「普通」であった不幸な状態へ自らを引き戻そうとしてしまうのです。これが心の壊死の本質です。
壊死してしまった心を変えることはできるのでしょうか。
すぐには難しいとしても徐々に変えていくことは可能です。そのために重要なことは、心が麻痺したり壊死したりしてしまった原因は、そうなるまで自分の心をコントロールしなかった自分にあるということを認めることから始まります。
もちろん、環境がそのような心を作り出す大きな原因になったこともあるでしょうし、実際は知らず知らずに心は麻痺していきますので、自分だけの問題とはなかなか思えないところもあるかもしれません。しかし、自分自身の責任と考えることは非常に重要なのです。そのようにして初めて、自分自身と向き合い、壊死してしまった心を回復させようという意欲がわいてきます。
自分自身と向き合い、改善していくということは、それまでの自分の価値観を捨てるということでもあります。自分の人生は不幸になることが結末だという、極端な人生のシナリオを自分が作り出しているということをまず認めましょう。
最初のうちは自分をだますつもりで考え続けましょう。自分の心を作っているのは、脳です。脳は、善悪の区別なく、毎日の日常を当たり前と認識し、その枠から自分を出さないようにすることでアイデンティティを守ります。
ですから、もし人生のシナリオの結末がいつも不幸になっているのなら、意識的に幸せが結末なストーリーに変えていくのです。こうした意識を持ち続けることによって、やがて脳はその幸福な状態をあたりまえのことと認識し、それまでの人生のシナリオは書き直されていくのです。
このように心の状態を理解して、自分自身と向き合うことは、やる気を継続させるうえで不可欠といえます。
心の仕組みを理解して、自分をコントロールしていきましょう。