2022.11.19
バンクーバーオリンピックのフィギュアスケートで、印象的なシーンがありました。
浅田真央選手とキム・ヨナ選手が並んでインタビューを受けていて、「金メダルを取れますか」と聞かれていたんです。
確か、浅田選手は「負けたくない」とか「金メダルを絶対取りたい」という趣旨のことを答えました。
キム・ヨナ選手のほうは「金メダルは欲しいと思ってもらえるものでもない。絶対に大丈夫と言われても取れないのがオリンピックの金メダルだから、自分がそれにふさわしい人間であれば取れるんじゃないでしょうか」と話していました。
今回はこのふたりの選手を例に出しながら、試合との向き合い方についてお話をしていきたいと思います。
キム・ヨナ選手に気負いは感じられず、ライバル達のことも見ていません。
ただ、自分の演技に集中してやるべきことをやれば大丈夫、と感情を高ぶらせずにいるように見えました。
目の前の試合を自分との戦いととらえ、自分を整えることに終始していたんです。
一方の浅田選手は、相手に絶対負けたくないという闘争心を露わにしていました。マスコミやまわりにいる人達、そして国民が、キム・ヨナ選手とのライバル関係に注目していたのが影響した面もあるのでしょう。
相手を打ち負かすといっても、フィギュアスケートは個人競技です。
しかも、1対1の対戦形式ではなく、いかに自分の演技で高得点を出しながら、トータルの得点を伸ばせるのかを競う競技です。
自分の最高の演技をどれだけできるかにかかっています。
つまり、自分との戦いで勝敗が決まるのです。
相手と戦おうとすると、逆に余計なプレッシャーが自分にのしかかります。
こんな時こそ、自分がやるべきことに集中するのが一番です。間違っても周りの人は、「絶対に負けちゃだめよ」「あの人だけには負けないでね」と、いうような言葉を投げてはいけません。
その期待とプレッシャーで選手は、危険なメンタルの状況に気づけないまま、ライバルとの戦いに思考を奪われてしまっていたのではないでしょうか。
逆にまわりの人達が言うべきは、「金メダルは狙いに言って、もらえるものじゃないから。今のあなたらしくいれば、それでいいのよ」「自分がやるべきことを全部やって、その結果を受け入れて、前を向うよ」と自分に集中させる言葉なのではないかと思います。
そうすれば選手も「そうだよね」と思えて、目の前のことに集中できるはずです。