2023.08.20
では、表情やしぐさを含めた関わり行動によって、心から安心してもらえる状態になったとします。
そこから、どのように会話を進めていけばいいか、具体的にお伝えしたと思います。
これはアクティブリスニング (能動的な聴き方)と呼ばれ、心理カウンセラーが初めて出会ったクライアントにカウンセリングしていく上では基本中の基本となっているものです。
また、日本のみならずアメリカなど世界各国の心理カウンセラーたちが基本的に使う、会話スキルのベースでもあります。
それでは、アクティブリスニングを4つのステップに分けて習得していきましょう。
●ステップ1 しっかりと相手と向かい合う
関わり行動の説明で述べた通り、相手が安全かつ安心して話せる環境を作ることが、アクティブリスニングの基本となります。しっかりと相手と向かい合いましょう。
●ステップ2あいづち・うなずき
相手の話にうなずくこともなく、しかめっ面で聴く人が意外と多いのですが、人の話を聴く時の基本は、あいづちとうなずきです。
うなずく際は、首を振りながら「そうだ、そうだ」というふうにしっかりとうなずきます。
相手の話に同意していようがいまいが、とりあえず相手の話をきちんと聴いてい るというメッセージとして、ぜひうなずいてください。
また、あいづちも同様に効果的です。
「そうなんですね」「なるほど」という言葉や、「へぇ」とか「ふーん、そうなんだ」というラフな言葉を使う場合もあります。
相手との関係性や状況に応じて使い分けることが大切です。
うなずきやあいづちは、「あなたの話に興味がありますよ」「もっと話していただきたいです」という心理的なメッセージを、あなたから相手の方に送っていることになります。
相手はその心理的メッセージを受け取ることで、「もっと話したい」とか「この人は真剣に聴いてくれている」と思うはずです。そうすれば、コミュニケーションを次の段階に進めていけます。
●ステップ3鏡返し
相手が話した内容のうち、大切なポイントやここぞと思った部分を少し復唱してみましょう。<BR?
例えば、相手が「昨日はね、大変だったんですよ」と言ったとすると、「大変 だったんですね」というように同じ言葉を一部コピーしてそのまま繰り返すのです。
また、相手が「今、とにかく体が辛くて、本当にこのままでは練習続けられないと思うんです」と言ったら、「練習続けられないと思うのですね」というように、大切なところを一部でいいので必ずコピーして、鏡に映すように相手に繰り返します。
会話においては、相手の話を全てまんべんなく聴くよりも、相手が話したい重要なポ イントをしっかりとピックアップしていくことが大切です。そうすれば、会話がさらに 深まり、前進していきます。
例えば、次のような文章では、あなたはどこをピックアップしますか?
「昨日、得意先の人に呼ばれて、夜中の3時まで一緒に飲んだんだ。結果、二日酔いに 45% なってしまったけど、飲みに行ったおかげで前から進めていた商談が決まりそうなんだ。早速、部長に呼ばれて褒められたよ」
この話を聴いた時、相手が一番伝えたいことは何なのか考えて、そこをコピーして鏡返しするのです。
「へえ、3時まで飲んだの」と返す人もいるでしょうし、「部長に呼ばれたんだね」と返す人もいるかもしれません。
しかしこの場合であれば、「結果、大きな商談が決まりそうなんだね」と返す人が多いと思います。相手は商談が決まったことを伝えたいと思っている可能性が高いからです。
でも、コピーするポイントが外れていても構いません。
例えば、「夜中の3時まで飲んで大変だったね」と鏡返ししたならば、「いやいやでもね、そのおかげで商談決まったんだよ」と、相手は自分が言いたかったことをかぶせて言ってくるでしょう。
つまり、鏡返しの技法を使っていれば、多少ポイントがずれたところをコピーしてしまったとしても、きちんと相手は言いたいことを修正してくれるため、ポイントを外さずにコミュニケーションを続けられるのです。
鏡返しの技法を使うと、「自分のことを深く理解してくれた。話の内容を本当によくわかってくれる」と相手に思ってもらえます。信頼関係を結ぶうえでとても効果的ですから、ぜひ活用してください。
●ステップ4・・相手の話を要約する
「じゃあ結局夜中の3時まで得意先の人と飲んだけど、大きな商談が決まって部長にも褒められて良かったね」
これは、先程の文章を簡単に要約したものです。
話が長くなってきたら、時々こういった要約を入れて、相手の話すポイントを確認していきます。
また、毎回のメンタルトレーニングの終了時や、前回の内容をおさらいするうえでも、この要約は有効です。
アスリートやビジネスマンの多くは、自分の状況を上手に整理して話すことをあまりしません。
だから、この要約の力を使うことによって、メンタルトレーナーと相手がどういった観点で話しているのか、どのように広がっていくのかということを明確に確認できます。
そして、会話を表層的なものではなく、内面的で本質的なものに移行できるでしょう。