「開かれた質問」と「閉ざされた質問」

2023.08.23

相手を受容し、共感し、良い信頼関係ができた後、今度は具体的にどのような質問をしたらいいかわからない、という声をよく耳にします。
この時のために覚えておきたい質問技法を次にご紹介します。

一つ目は、「開かれた質問」と「閉ざされた質問」を使い分けることです。

まず「開かれた質問」というのは、「はい」か「いいえ」などの一言で答えられない質問のことです。

メンタルトレーナーはまず、この「開かれた質問」から一日をスタートすることが多いといえます。

例えば、「調子はどうですか?」 これは典型的な開かれた質問であり、一言では答えにくい質問です。

「体が痛いです」とフィジカル面について言う選手もいれば、 「何となく憂鬱で気分が乗りません」というようにメンタル面のことを言う選手もいます。

「体の調子はどうですか?」とか「昨日はよく眠れましたか?」という質問だと、返答が「良い」「悪い」とか「はい」か「いいえ」になってしまい、それ以上相手が言いたいことがあっても、会話が広がりにくいというマイナス点があります。

ですから、一日の始めに「調子はどうですか?」とか、試合後に「今日の試合はいかがでしたか?」というふうに質問してみましょう。そうすると、相手の中にある話したいことや気になっていることがストンと降りてきて、話し始めます。

今、この人はこういうことを扱いたいんだな、そういう会話をしたいんだなということをメンタルトレーナーは認識した上で、総合的に話を進めていきます。

まず、話のスタートは「開かれた質問」からです。ぜひ覚えておいてください。

ところが一方で、開かれた質問をしてもなかなか答えが出てこない人もいます。相手がシャイな人や、口数が少ない人の場合です。

その場合は、具体的に「閉ざされた質問」を中に入れてあげると、答えやすくなります。

「昨日はよく眠れましたか?」とか「今日の試合は緊張しませんでしたか?」のように、「はい」か「いいえ」で答えられる質問をして、そこから少しずつ会話のリズムを掴んでいきます。

ただし、そこで気をつけなければいけないことがあります。

「はい」か「いいえ」の質問があまり繰り返されると、尋問みたいになってしまう危険性があるのです。

「昨日はよく眠れましたか?」 「食欲はありますか?」 今、体は仕上がっていますか?」などというように「閉ざされた質問」が多く続くと、私たちは何となく尋問口調になってしまいます。

尋問的な質問に答えてばかりいると、相手は自分が何を言いたいのかわからなくなります。この会話がどこに行き着くのかというゴールも見えず、だんだん答えるのが面倒臭くなったり、殻に閉じこもろうとしてしまいます。

そのため、この「閉ざされた質問」というのは、あくまで「開かれた質問」が答えづらい時にのみ適用し、それらを上手くミックスするのが良いと思います。

「今日の試合はどうでしたか?」(開かれた質問)

「うん。まあまあ調子は良かったです。でも、何となくしっくりこないところがありますけど」
「なるほど、そうなんですね。どういうところがしっくりこなかったんですか?」(開かれた質問)

「うーん、何か上手く言えないんですけど」
「例えば試合運びとか、自分の体の感覚とかいろいろありますけども、体の感覚としてはどうでしたか?」(開かれた質問)
「はい。体の感覚は、わりとしっくりきてました」
「なるほど。では、試合運びのほうがしっくりこなかったのでしょうか」 (閉ざされた質問)

「うーん、そうですね。今日は体調が良かったにも関わらず、試合を上手く組み立てら れなくて、それらが一致しないせいで、しっくりこなかったという感じですかね」

ここでは、後半の「閉ざされた質問」によって、選手が体調と試合運びという二つの 軸で具体的に考えることができ、試合の内容について深く振り返ることができています。

このように、「開かれた質問」と「閉ざされた質問」を上手く織り交ぜることによって、深いレベルで相手の気づきを促すことができます。

メンタルトレーニングは、メンタルトレーナーが相手にアドバイスをするものではありません。相手と会話をする中で自然と気づきを促し、パフォーマンスを上げていくものです。

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