腫れ物に触る、引いてしまうのはNG

2023.10.07

日本人の2人に1人ががんになるという時代、皆さんのまわりにも、もしかしたらがんの告知を受けた人がいるかもしれません。

家族や友だち、仕事先の人、「私、がんになったの」とカミ ングアウトされたら、どんなふうに接したらいいかということをお伝えしたいと思います。

まず私のように、フルオープンにしている人もいれば、まわりの人にだけこっそりと打ち明ける人もいるのではないかと思います。

フルオープンであったとしても、こっそりと打ち明けられたとしても、その人ががんであることを知っているという時点で、あなたは信頼されているということです。

フルオープンにしている人は、その人なりにしっかりと自分ががんであることを宣言し、包み隠すことなく、がんと向かい合って治療に取り組もうとしているのだと思います。

まわりの人に は言っていないけれど、その人からこっそりがんの告知を受けた人は、あなたを信頼し、心から 味方になってくれる人だと思って打ち明けたに違いありません。

私は自分ががんになってみて、まわりの人に打ち明けたとき、さまざまな反応がありました。

その多くは、言われたほうも困ってしまっているのだなと感じました。

実際にがんという病気は、言葉も非常にインパクトがあります。

少し前までは治らずに余命宣告、となるような病気だったと思います。今でもその印象はとても強くて、その人の余命があと わずかしかないというように、勘違いをしている人も多いのです。もちろんがんは進行形で、やっかいな病気ではありますが、しっかりと治療に取り組んでいれば、完治する病気でもあります。

周囲で、もしがんになってしまった人がいるときに、そしてそれを打ち明けられたときに、どのように対応していけばいいのか、何が適切なのかということをお話ししていきたいと思います。

がんの病気とその治療との向かい合い方は、人それぞれ違います。

また、1人の人でも、今日 は前向きな気分になっているけれど、明日は落ち込んでどん底になっていることもあるかもしれません。

まず本人が一番つらいなと思うのは、この話になったときに引かれてしまったり、明らかにそ の話をしないように終わらせようとされたりするということです。がんになったことは大きな出 来事ではありますが、別に悪いことをしたわけでもないし、隠すようなものでもないと私は思っています。

けれども、たとえば「私、がんになりまして」と言うと、多くの人が、目をそらしてしまう、 あるいは腫れ物に触るようにオドオドとしながら、 「大丈夫ですか?」みたいなことを言ってしまう……………。もちろん聞いたほうもショックな気持ちはよくわかります。けれど、そのような反応を見てしまうと、ついつい「ああ、言わなきゃよかったな」とか、「この人には言ったことによって負担になってしまうんだな」と、なんとなく罪悪感を感じてしまうのですよね。

聞いたほうもどう対応していいかわからない。その気持ちはわかります。でもそういったときは、しっかりと相手の目を見て受容的に、「そうなんだ。それはたいへんですね。 何か私にできることがあれば言ってくださいね」という、短くも温かい、温度のある言葉だけで、ずいぶん救われるのではないかなと思います。

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