2023.10.09
私の周囲にはあまりこういう人はいませんでしたが、たとえば近所の人やちょっと距離のある親戚の人、あるいは友だちなどで、悪気はないのだけれど、あれこれ励ましてくる人がいます。
その人自身も一生懸命勇気づけようとしているせいか、口数が多くなり、その結果余分なことまで言ってしまうというリスクがあります。
これもNGです。たとえばこういうことです。「今ね、がんは治る病気だからきっと大丈夫よ」。 そう言われても、「大丈夫かどうか知らないでしょうし、その人が決めることではないですよね」と心で思ってしまいます。
「私の知り合いに○○の療法をやって治った人もいるし、だからあなたもこうしてみたらいいのよ」。あるいは、「私の知り合いはね、もっとひどいがんだったの。ステージ4だったのよ。あな たはまだステージ2でしょ、大丈夫よ」など、誰かと比較をしたり、自分の知り合いなどと比べ られたりしても、がんは人それぞれ、タイプも違えば、同じがんでも進行状況も変わります。
よかれと思って言っていることに対して、当事者としては心がざわつくということがあります。
もちろん闘病して治った人のケースを聞いて、元気になるということもあります。
そういう場 合は少し言葉を丁寧に、「ステージ4でも治った人がいる。だからあなたも大丈夫」という言い 方ではなくて、「ステージ4になった人でも完治している人を知っています。
だからあなたも きっとよい治療が見つかると思うから、何かできることがあったら言ってくださいね」というふうに伝えてあげればいいと思います。
この「何か私にできることがあったら言ってくださいね」という言葉、この言葉はとても安心します。
傍観者ではなく、あくまで自分のできる範囲のことをしっかりとやってサポートしていこうという思いは、孤独感で世の中から切り離されたように感じるがん患者にとっては、とても心休まる言葉になります。
実際にはそう言われたからといって、「あれをしてください」「これをしてください」「こんなふうに手伝ってください」と言われることはないでしょう。自分や自分の本当に身近な家族たちとともに治療に向かっていくしかないわけですから。
けれど、一方的に「ああしたほうがいい」「こうしたほうがいい」と、どこかで聞いたような事例で励まされるより、「何かできることがあったら言ってくださいね」と言われるのは、非常に勇気づけられるということを、覚えておいていただきたいと思います。