2023.03.03
不安が増大し過ぎて、動けなくなる、典型的なケースをお話ししましょう。
仕事を失い、 住む家がないのにもかかわらず、仕事を断り続けている男性がいました。
住むところがないので、住みこみの仕事を探しているのですが、ここで仕事が見つからな ければ、ホームレスになるという厳しい現実が間近に迫っています。
でも、この場合は、住みこみの仕事をすれば、ホームレスにならずに生きていけるのです。
それなのに男性は、自分から仕事を断ってしまうのです。
本人は、「自分のできる仕事だと思う。でも、給料が安い」と言います。 しかし、それは高い給料で雇ってくれるところが他にないのだから、仕方がないようにも思えます。
彼は、住みこみの部屋がふたり部屋であることにも、難色を示していました。
「ひとり部屋がいい」とこだわるのです。
そうやって仕事を断ってしまうのですが、断ってしまうと、ふたり部屋どころではない住む家のないホームレスになってしまいます。
まず、彼はいったい何が不安だったかというと、ふたり部屋に難色を示すという様子を見る限り、コミュニケーションが苦手だという不安があるのです。
次に、本人はできる仕事だというけれど、本当に仕事ができるのかわからないという不安があります。
給料が安いことに関しては、「自分が認められていない。不当に扱われるんじゃないか」という不安を感じているのです。
こういった不安も、ホームレスになって、生きるか死ぬかの不安に比べたら、耐えられない種類のものではないと思うのですが。
しかし「不安」というものは、ものすごく強いものです。
いろいろな不安が一気に噴き出てきたときに、いったいどうするのかというと、自分から仕事を断ってしまうのです。
この男性の場合は、仕事を断ることで、自分自身を否定しないでいられるプライドを保っているのです。
このようなプライド失業者は、何が何でも食べていかないといけない立場の人でも、プラ イドがとても高くて、「こんな仕事はやれない」と言います。でも、その仕事はつまらないかもしれないけれど、きつい仕事でもないのです。
長く働くにつれ、肺を患ったり、怪我をしたりして、体を壊してしまい、「この仕事はもう無理だ」と思える仕事ならわかります。
しかし、プライド失業者の場合は、そういったき つい仕事ではなく、少々退屈だったりつまらなかったりするだけのことが多く、仕事で自分の価値を得られないことに不安を持って、ホームレスに転落していくのです。
これは、本人が「自己肯定感」を持っていないために、他の人がそれを与えてくれないと、自分自身のバランスがとれないのです。
この男性の場合も、他の人が「自己肯定感」を与えてくれないと満足できず、あえて自分が破滅する道を選んでしまいます。