2023.08.30
スポーツ選手の中には、自己流でイメージトレーニングをやっている人も多いようです。
しかし、「自分でも何となくイメージトレーニングをやってみますが、あまり効果ないですね」とか、「まあ、やらないよりはやった方が良いんでしょうけど、それで身体のパフォーマンスが変わるとは思えません」という声も聴きます。
そこで、彼らに話を聴いてみると、正しいイメージトレーニングができていないので す。例えば次のような話を聴きました。
「何となくボーッと座って、頭の中で今からやる演技を思い浮かべてみます。
途中までは調子良いのですが、苦手な所が出てくると、上手くいかなかったり失敗したりするイメージが出てきます。
「やばい、やばい』と思っても、失敗するイメージはどんどん大きくなって、やがて転んでしまったり、大失敗しているイメージまで湧いてきてしまうのです。
そうすると、もうイメージトレーニングが嫌になって止めてしまうのです」
実は、イメージにはこういう性質があります。
イメージは一番インパクトが強いもの、または一番最後に思い描いたものを記憶として保存するということです。
つまり、失敗したイメージで止めてしまうと、次にそのような場面になるのは本番の試合になります。その本番でプレッシャーやストレスがかかった時、脳はものの見事に失敗のイメージを再現し、身体はその反応に従ってしまいます。
イメージの力を侮ってはいけません。正しいイメージトレーニングによって、自身の中に眠っているさらに良いイメージから、身体の素晴らしい反応を開花させましょう。
もし、マイナスのイメージが出てきてしまった場合、大切なのは、決してそこで止めないということです。
その時は、もう一度ゆったりと座って深呼吸をしながら、プラス のイメージに書き換えるのです。ちょうどビデオテープに新しい映像を上書きするように。
例えば、苦手な所でバランスを崩すイメージが出てきたとします。その場合は、バランスを崩しそうになったけど、しっかり立て直して最後までやりきった、とイメージします。
途中まではマイナスイメージで物語が進んでいても、そこから後は上手くやっていける、というイメージに切り替えるのです。
スポーツだけではなく、日常のコミュニケーションや仕事上でのプレゼンテーションなどでも、その効果を発揮できます。
例えば、得意先へプレゼンテーションに行くと、苦手なタイプの口うるさい担当者がいつもいるとします。
そして「今回はちゃんとできるの?」などと嫌味を言われます。
そこで頭に血が上って、「ちゃんとやらなければ」と思えば思うほど頭が真っ白になり、言葉がシドロモドロになります。段々周りの目が冷たくなっていって、立て直そうとすればするほど焦って、資料をうまく説明できなくなるという状況です。
そんな時には、次のようにイメージを書き換えていくわけです。
「今回はちゃんとできるの?」と嫌味を言われたら、大きく息を吐いて「はい、大丈夫です」と笑顔で言っている自分をイメージします。
相手は少し驚いて「本当なの?」とさらに嫌みを言ってきます。
でも自分は相手の目を見ながら、ハキハキとしたプレゼンテーションを行い、周りもいつもと違うあなたに 安心の眼差しを向けています。
そのため、さらに自信を持ってプレゼンテーションができ、最後は皆が笑顔でうなずいてくれた、というイメージを持つのです。
アメリカでは皆、ヒーローになるのが大好きなので、この成功のイメージトレーニングが大好きです。
子どもの頃から、皆が順番に前に出て行って素晴らしいスピーチをし、拍手で絶賛されるイメージと経験を積んでいます。
まるで自分をスティーブ・ジョブズばりのトップ 経営者に見立ててプレゼンテーションをします。
そのような「ごっこ遊び」をしながらイメージトレーニングを重ねていくから、交渉やプレゼンテーションが上手なのです。日本人が交渉やプレゼンテーションが苦手なのは、人間関係におけるイメージトレーニン みがきちんとできていないからかもしれません。
やったことがないことや苦手なことは誰にでもあります。
だからこそイメージトレー ニングを使って予行練習をし、恐怖と不安の原因となるマイナスイメージを、これから 起こって欲しいプラスのイメージへと書き換えるのです。そうすれば、安心感や安定感を持って実行できるのです。
アメリカの学生たちのような大喝采やガッツポーズなどは、日本人には向かないかもしれません。
しかし、周りの人が笑顔でにっこりうなずいてくれたり、「よし、できた!」と自分自身をしっかりと認められるような承認のイメージトレーニングはできるでしょう。
そのような日々の心がけによって、良いイメージトレーニングが習慣になり、ストレスや不安が解消していくと思います。