緊張とは?

2023.09.01

緊張は正しくは「緊張反応」と呼びます。

様々な危機的状況にさらされると、脳が無意識のうちに緊急事態のイメージトレーニングを勝手に行ってしまい、体中に様々な反応が起こります。

例えば、手に汗をかく、 頭が真っ白になる、心臓がドキドキする、変な汗が出る、手足が震える、顔が真っ赤に なる、などがあります。

人それぞれの性格や緊張の原因は違うのに、緊張すると皆、身体は同じような反応を示します。

これは一説によると、私たちのDNAにこの反応が刷り込まれているからだといわれます。

つまり、太古の人類が、外敵から身を守るために必要不可欠だった身体の反応ということなのです。

私たちの先祖が猿から人間に進化する頃は、まだあまり武器を持たなかったため、自 然環境は非常に過酷なものでした。

一人で歩いている時ガサガサと音がして、「猛獣が襲ってくるかもしれない」と思ったら、身を守るために、身体に様々な反応をさせなければいけません。

まず、最初にやるべきことは、心臓をドクドクと動かすことです。身体の血流を良くして、すぐに動けるようにスタンバイします。

次に、血液の多くを脳に送ることが重要になってきます。

人間は脳が発達したため、酸素量の多くは脳で消費されます。

つまり、色々なことを考えるため、いち早く脳に血液を送り込まなければなりません。そうすると、顔が赤くなったり、カッカッと熱くなってきます。

そして、脳に大量の血液が送り込まれたら、手足の末端の神経は縮こまって毛細血管が収縮します。

もしも、猛獣の攻撃による大けがで大量出血をしたら、命に関わります。

この場合、 なるべく身体の末端部分は血管を収縮させ、グッと筋肉を固くする、ということを無意 識でやっているわけです。指先が冷たくなったり足がガクガク震えてくるのも、一時的に手足の血行を抑制して、命を守ろうとしているからなのです。

また、手には汗をかきます。手の甲ではなく手の平にびっしょりと汗をかくのはなぜでしょう。

一説では、猿であった頃の名残と言われています。木に登って逃げる際、乾いた手よりも湿った手のほうがグリップが良くなるからです。

このようにDNAに刻み込まれているとしたら、その反応を自分の意志で止めることはできないのです。つまり、脳の中で「これはピンチなんだ、怖いことなんだ」という認識が起こった途端、身体は緊張反応を起こすのです。

ということは、その前段階で「これは怖いことではない」という認識を脳にさせる必要があります。

大きな試合といっても、ライオンが出てきて襲われるわけではありません。現在は、私たちの先祖が暮らした環境とは大きく様変わりしています。今は、試合でのびのびと力を発揮したり、会議の場で堂々とプレゼンテーションすることが大切です。

身体を守るために無意識に筋肉に力が入って、胸が締まって声が出にくくなり、プレ ゼンテーションの場で声がうわずってしまうのは本末転倒です。

プレゼンテーションや試合が怖いものや辛いものだと思った瞬間、緊張反応を起こしてしまうので、「これは日常でよくある当たり前のことだ」と思うことが大切です。

特別なことでなければ、脳はそこに外敵がいるとも命の危機に瀕しているとも思わないのです。

今ある目の前の状況を、自分にとって安全な場所での当たり前のことと捉えます。

そうすると、身体が無意識のうちに起こしてしまう悪い緊張反応が起こることはなくなります。

かつて、ロサンゼルスオリンピックで体操個人総合金メダルを獲った具志堅幸司氏の名言として、「試合のように練習をし、練習のように試合をしろ」があります。

現在、 具志堅氏は指導者として後進の育成に当たっていますが、 選手時代からいつも強い意識を持ってメンタルトレーニングをしていたようです。

試合のような練習とは、ダラダラせずに緊張感を持って練習することです。 また、練習のような試合とは、試合を特別だと思うのではなく、自由にのびのびとリラックスして試合に臨むことです。これが秘訣だというわけです。

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