どうして欲しいかは本人に聞こう

2023.10.13

NGなことをたくさん伝えると、「じゃあ、どうすればいいのよ」と思われると思います。

そうなんです、やはりがん患者というのは孤独感もありますし、自分自身が恐怖に常にさいなまれているという事実もあるので、何を言われてもイラッとしてしまうかもしれません。

「人との関わり」がつらく、そして体力もないため、ついつい人とコンタクトを取るのがめんどうくさくなって、家に閉じこもっている人も多いと思います。そしてますます孤独が心をむしばんでいきます。

なので、この中で私がこういうことをしてもらえて本当にうれしかったな、こういう声をかけてもらってうれしかったな、と思うことをいくつか挙げてみます。

たとえばお見舞いの品に関しては、高いものや特別なものを送る必要はありません。その人が、何が好きで、どんなものがうれしいかということを聞いてあげればよいのだと思います。

私の場合は鳥がとても好きなので、鳥がプリントされたかわいい靴下をもらって、「身体を冷やさないように気をつけてくださいね」と言われたのは、とてもうれしかったです。

にんにくを浸したオイルをつくってきてくれて、「これもがんに効果があるみたいですよ」というふうに、お手製のオイルをもらったりもしました。

効果はともかく、手間をかけてつくってくれるその気持ちがうれしい。すごくお金のかかったものというよりも、その人のことを考えて自分なりにセレクトしたものや、手をかけたりしたものは、どんなものでもとてもうれしかったです。

私の知り合いの方が同じく乳がんになったとき、彼女に私も聞きました。「何を差し入れたら「いい?」と。

すると彼女は、「ものではなくて、浮世先生の言葉が欲しいです。 だから手紙か何かが欲しいです。

浮世先生の言葉は本当に勇気をもらえるので、手紙をもらえたらそれだけで十分です」と言ってくれました。

とてもありがたかったし、同時に、今は彼女の気持ちもよくわかります。

ものではなくて、自分の心を支えてくれるもの。それはその人が好きなものでも何でもいいと思うのです。

何が好きでどうしてほしいかわからないときは、ぜひ本人に、「どんなものがいいですか?」とか、「何かお役に立てることはありませんか? 何でも言ってくださいね」と、気軽に声をかけてみてください。

直接聞く機会のない人に関しても、誠実なその気持ちは伝わると思います。

あるお仕事でおつき合いのある男性の方が、「お見舞い」と書いた封筒を持ってきてくださいました。

そこに金一封入っていました。その方は、うつむきがちに照れながらこうおっしゃいました。

「自分はこういうときに、どういうものがいいかということをうまく考えられないし、ましてや女性の方ですから、何を差し上げていいか全くわからなかったんです。なので、ぶしつけで本当に申し訳ないんですが、せめてもの気持ちでお見舞いをお持ちしました」と。

不器用なりに、何かしらお見舞いをしたいというその気持ちが強く伝わってきて、私はとても感動しました。

そのときに思ったのです。

うまくやることではなく、ちゃんとお見舞いの気持ちを伝えれば、それはまっすぐに伝わっていくのだな、と。

がん患者になった場合、小さなことはストレスにも なりますし、逆にちょっとした温かさや、自然なさりげない心遣いが何よりも深く染み入るということもあります。

ですから、あれこれ考えすぎずに、とにかく「何か欲しいものはありますか?」「必要なものはありますか?」「何か自分にできることがあったら、荷物を運ぶなり、車を出すなり、何でもいいので言ってください。本当に気軽に言ってください」と声をかけたほうが、はるかにその人の心に寄り添っていると思うのです。

入院や手術のときにも、たくさんの人にお見舞いに来てほしいという人もいれば、あまりそういうときは人に見られたくないという人もいると思うのですね。私は手術の前後にたくさんの人が来て心配そうな顔で見送られるのは、とてもプレッシャーになるタイプでした。

友人は、たくさんの家族が来てくれて、声をかけてくれるのがとても元気になったと言っていました。

人それぞれ。だから、大切なことは「どうしてほしい?」「どういうのが力になれる?」 と相手に聞く。そういったことをぜひ行っていただきたいと思います。

ページトップ