2023.12.08
そうしてやっと入学できた陸軍士官学校で若者 たちを待ち受けているのは、地獄とも言える過酷な訓練。
入学直後に実施される7週間におよぶ 「ビースト・バラック(獣舎)」、通称「ビースト」 と呼ばれる訓練で、若者たちは肉体的にも、精神的にも、人間として極限まで追い込まれていきます。
「ビースト」の1日のスケジュールを少し覗いてみると、朝5時に起床し、その30分後には体カトレーニングを開始。
そこから朝・昼・晩関係 なく1日中訓練と授業が行われます。食事の時間>以外に一切の休憩はなく、22時に消灯。
この訓練期間中は、家族、友人、恋人といった 外部との接触も禁止されています。
この状況が7週間も続くわけですから、想像するだけで息が詰まりそうです。
そんな「ビースト」に臨む士官候補生たちは、 知力も体力も兼ね備え、さらに高い志を持っていることは紛うことなき事実でしょう。
入学に至るまで、並々ならぬ努力を続けてきたに違いありません。
にもかかわらず、この「ビースト」では多 くの士官候補生たちがあまりのつらさに耐え切れず脱落し、学校を後にするのです。
地獄の「ビースト」を乗り越えられる人、脱落 してしまう人の差は、一体どこにあるのでしょうか?
入学したばかりの士官候補生を対象に、グリッ ト力=「やり抜く力」を数値化するテスト「グリット・スケール」を実施すると、その“差”が明らかになりました。
「ビースト」を無事に終えた者たちは、脱落し た者たちに比べ、いずれもグリット・スコア、つ まり「やり抜く力」の数値が高かったのです。
さらに驚くべきことに、グリット・スコアの高 さと、入学時の審査基準となった大学進学適性試験のスコア、高校での成績順位、そして体力測定の結果には、なんの関係性もありませんでした。
むしろ、これまでの成績がどんなに優秀でも、グ リット・スコアが低い者は 「ビースト」 の壁を乗り越えることができなかったのです。
極限の状況下で明暗を分けたのは、グリット力 がもたらす「ネバー・ギブアップ」の精神、その一点のみだったといっても過言ではないでしょう。
ちなみに、陸軍士官候補生が行う 「ビースト」 よりもさらに過酷な訓練を実施しているのが、米 国陸軍特殊部隊 「グリーンベレー」 ですが、ここでもグリット・スケールの調査が行われました。
鍛錬に鍛錬を重ねた、まさに軍人のエリートとも言えるグリーンベレーの隊員たちですが、その訓練過程では「ビースト」同様、多くの脱落者が生まれるといいます。
最終的な訓練を耐え抜いた者たちと脱落した者たちの間には、やはり「やり抜く力」の差が見られたということも付け加えておきます。